(今日は悔しかったから記事をもう1本)
【今日のノート:めくるめく瞬間の連なりなのだ。】
ボクは最近,トレード中に以前ほどチャートを見なくなりました。
下手くそなくせに生意気!と言われるかもしれませんが,別に板読みの達人になろうと考えたわけでも,チャートを否定したわけでもないんです。
同時並行でいくつもの情報を処理するのが苦手だから,チャートという,あの膨大な情報の塊を相手にトレードすることを半ばあきらめて,板だけに神経を集中させて,瞬間,瞬間を相手にトレードしてみようと考えたのです(Igniteという強力な相棒もいるしね)。
デイトレードで板を見ていると,時間の流れが目の邪魔をしない。
数字が表示されては,パッと消えていく。そしてまた数字が現れる。
その繰り返しが波のように感じられれば,そのトレードは比較的うまくいく気がします。
ボクはなるべく心を静かにして,その波を感じ取ろうとします。
(ほんとはそんな美しげな感じじゃないんだけど)
吉本ばななの『ミトンとふびん』を読みました。
書店でふと目にとまったこの本の帯に,著者が「この本が出せたから,もう悔いはない。引退しても大丈夫だ。」なんて書いていたから,吉本ばななほどの人気作家が「引退しても大丈夫」と思えるくらい,達成感を感じた作品なんだと思って手に取りました。
6つの短編からなるこの本は,死や喪失,別れが,優しい思い出をともなってそばにいるような物語を集めています。
中でもボクは,「SHINSHIN AND THE MOUSE」に心をすごく温められました。
長患いの母親を見送ったばかりの主人公の女性が,友人に誘われて台湾に旅行し,そこで紹介された男性との短い交流を通じて,少しずつ自分と世界との心地よい距離を取り戻し始める,というお話です。
その中にこんな文章がありました。
人生は禍福で編まれた縄ではなくめくるめく瞬間の連なりなのだ
・・・ん?あれー?
これってボクがいまデイトレで目指そうとしてる境地じゃないか!
「利確も損切りも同じことだ」「瞬間,瞬間を相手にトレードする」
もちろん単なる強引なこじつけだし(笑),ボクのデイトレには深さも人生もありませんが,この文章がとても印象的だったということは,「いま,この瞬間」しかないという感覚が,ボクにとって大切なんだなーと思いました。
小説を読んで,心おだやかな時間を過ごしたいと思ったら,『ミトンとふびん』がその望みをかなえてくれるはずです。
この本の書評を書いた金原ひとみが,「SHINSHIN AND THE MOUSE」を読んでいるとき,「赤ん坊のように無防備な状態」になって,涙が止まらなくなったと書いていました。
ボクが感じていた心地よさはこういうことだったんだなと,プロの読み手の表現の的確さに,「すごいなー」とボクはつぶやいたのでした。
普通の単行本より小さな判型で,かわいらしい小著という感じですが,読んでよかったなーと思いました。
いい表現だなと思った文章の抜き書き
人と知り合うって,そんなことから始まるだけのことだ。その小さな印象がだんだん絶えない流れになり,少しずつ無視できない水流を作り,そこにまた大きく気持ちが注がれていく。
ちゃんといやなものはいやといいながら,距離をだいじにとりながら,なにかが生まれるスペースを決してつめることはせず,他人と他人のままで生きていきたい。
相手の好きなところを好きなままにするには,距離をちゃんと丸く置くことだと私はいつの間にか思うようになっていた。
この作品は,人との距離について繰り返し書いています。上の言葉は小説中で全面的に肯定されているわけではありませんが,密着した親密さだけが良いわけじゃないっていう考えを,ボクは肯定したいと思いました。
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