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名誉と暴力:アメリカ南部の文化と心理

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 これは本やアニメの紹介記事です!

<今日の雑談>

ボクは何度か海外旅行に行ったことがあるのですが、アメリカには行ったことがありません。

誕生してから250年にも満たない国家が、これほど短期間で世界最強となったことにはとても興味を覚えていて、いつか行ってみたいと思っています。

 

アメリカは東西南北で大雑把に地域を分けられます。

その中でも南部というと、のどかな田舎で独特のなまりがある地域という印象ですが、実はとても興味深い特徴があります。

それは、南部を旅した人の多くが南部人を「礼儀正しく、親切」と感じるような、高いホスピタリティーがあると同時に、ひとたび侮辱されたら相手を殺すこともいとわない暴力性を持っているという、極端な二面性です。

 

ニスベットとコーエンによる『名誉と暴力:アメリカ南部の文化と心理』は、アメリカ南部のそうした二面性に注目し、なぜ南部の人々がこのような特徴を持つに至ったかをさまざまな資料や実験結果から考察した、とてもワクワクする本です。

アメリカ南部(区切り方はいろいろあるようですが)は、殺人件数が非常に多いという、「のどかで礼儀正しい」イメージから見て奇異に感じられる事実ががある。

しかも、黒人の犯罪が多いという点では他のアメリカ諸地域と同様なのですが、白人の殺人率がとても高いのです。

 

著者たちはこのような特徴が生じた背景を「名誉の文化」に求めます。

名誉の文化とは、人前で「なめられる」ことに対して徹底した暴力で応じ、名誉を守ろうとするような文化です。

なぜ南部では極端な「名誉の文化」が根付いたのか。

著者たちはそれを、「ヨーロッパから南部に移民してきたのが、牧畜民であるスコッツ=アイリッシュだったからではないか」という、すぐには納得しがたい仮説を立てます。

 

著者らの説明はこうです。

牧畜民というのは、生計を維持するための財産が、牛や羊といった「現物」を守らなければ次はないような性質のものである。これは、仮に財産を奪われたら、たちまち生活できなくなってしまうことを意味します。

これに対して農耕民(北部へ移住してきた民族の多くはこれでした)の財産は、仮にその年の収穫物を強奪されたとしても、田畑そのものを盗まれることがないため、再起が可能です。

この牧畜民と農耕民のちがいは危機意識の差異を生み、南部の牧畜民は「俺の財産に手を付けた奴はただじゃおかないぞ!」という態度を形成したというのです。

 

「え~、ちょっと飛躍しすぎじゃない?」と思いつつ本を読み進めると、次々に南部人と北部人のちがいが明らかにされていきます。

おもしろいなーと思ったのは、南部出身の大学生と、北部出身の大学生に行った実験でした(同じ大学に通っている男子学生です)。

実験に協力してくれた大学生は、「この書類を別の部屋まで届けて」と言われ、狭い廊下を歩かされます。

すると向こうから見知らぬ人物がドスドスと歩いてきて、彼らの肩にぶつかります。

「あ、すみません」と言われるかと思いきや、「チッ!」と舌打ちしてそのまま行ってしまいます。

公共の場での侮辱体験ですね。

その直後に、またしても向こうから体の大きい男が歩いてきますが、道を譲ろうとする様子はありません。

 

さあ、侮辱されたばかりの南部人と北部人は、この後どういう行動をとるでしょうか。

結果は明らかでした。

北部人は侮辱体験があった人もなかった人も同じように行動したのに対して、南部人は侮辱体験をした学生に限ってギリギリまで相手に道を譲ろうとしなかったのです。

「名誉の文化」の発動ですね。

(こんな危ない実験よくやるよ。ほんとに殺しちゃったらどうするんだ)

 

他にも興味深い歴史的資料が次々に紹介されます。

・わりと最近まで、南部では不倫した妻や不倫相手を殺しても罪に問われなかった。

・「親指ルール」という伝統があって、親指より細い鞭を使うなら家族への暴力的懲罰が認められていた(大人の男が支配的にふるまうのを善しとしていた)。

・人前で家族を侮辱されたのに暴力を行使しない男は、周囲から評価と信頼を失った。

こわっ!

 

こうしたさまざまな根拠から、著者たちは、「生態環境」が南部人の礼儀正しさ(人をウッカリ侮辱することを避けようとする)と暴力性(なめられたらアカン!)を同時に生み育てたと結論しています。

ボクは読後、「日本にも武士道とかやくざとか、名誉の文化があるよなー。武士は生産手段を持たないし、やくざはなわばりを取られたら食い扶持がなくなるから、生態環境としては南部人に似ているかも」と、この本の説明をおもしろく感じたのでした。

これをノンフィクションで裏付けるような本をいま読んでいるのですが、読み終わったらまた紹介したいと思います。

 

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